ガンモドキ

ガンモドキは油揚げ、厚揚げと共に豆腐屋が作る揚げ物の一つである。豆腐を布袋に入れ水を絞ってから煉り、細かく切ったニンジンや野菜などを入れ、山芋でつないで丸めて油で揚げるという。これを関西ではガンモドキと言わずヒリョウズと言うそうだが、これはポルトガル語のフィリョースという揚げた南蛮菓子に似ているということから、この名がついたらしい。でも関西に仕事でよく出かけていた私も、ヒリョウズとはあまり聞いたことがない言葉だ。でも名前の由来というものはとても面白い!「味が雁に似ているからガンモドキ。見た目がフィリョースに似ているから飛竜頭(ひりょうず)」だとか、さて自分なら何と名付けるであろうか?

「あの男子、ガンモドキのような顔」われわれが青春時代には黒の学生服を着た男の子の中に、丸顔でニキビ面の油臭い子がけっこういたもんだ。でも最近ではこのての男子と殆んど出会わない。わたしの工房のある八千代市勝田台にはいくつかの高校があるので、毎朝多くの男子学生に遭遇する。しかしどの顔もわりと面長で肌つやがよく、赤ら顔のニキビ面などは殆んど見ない。なぜニキビ面のガンモドキ顔が減ったのか?詳しくは分からないが、たぶん豊かになった食生活などの栄養バランスが原因ではないかという。それに今の高校生は学生服の着こなしもキチンとしていてシャツのボタンを留めず、ズボンを下げたダラシナイ格好の男子も以前より少ないようだ。でも校則などを遵守し、枠からはみ出ることを嫌う社会風土に修練されていくことが、ベターであるとも思えないのだが。

最近アメリカではビヨンドミートという植物代替肉の会社が話題になっている。この会社は欧米で増え続ける極端な菜食主義者のビーガンやベジタリアンのために、大豆などの植物タンパク由来で食肉の擬似食品を作る会社である。最近ではアメリカのマクドナルドも、この肉を使ったハンバーガーを一部店舗で発売し人気だという。ケンタッキーフライドチキンでも鳥肉に似せた擬似食品の提供を始めるという。いよいよ欧米でも精進料理の発想でモドキ食品が浸透し始める。マックもケンタも中身は一緒の大豆蛋白ビヨンドミートの肉モドキになる。人口増と温暖化でいよいよ旨い本物の食材が食えた飽食の時代も終焉し、偽食材の贋食の時代に突入する。そして次にはあの私の幼児時代の貧食へと戻っていくのか?

大豆タンパクを使った擬似食品の提供は、日本では高野山の宿坊などでは昔から作られていて独自に進化してきた。擬似食品でもまだ食えればよいが、日々一汁一菜では栄養不足でガンモドキ顔もまた増える。

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

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