「まずい!飛び出してきた二匹の犬に、あっというまに前方をふさがれた」ワンワンと吼える声が聞こえたと思ったら、もう目の前に飛んで来ている。絶体絶命だ!少しずつ身構えながら後ずさりするが、牙をむき出し今にも飛び掛らんばかりだ。ボクサーに似た中型の黒い犬は距離を詰めてくる。「こんな所に入ってくるんじゃなかった」と後悔しても遅い。パニックになりながらも少しずつ後ずさりを続ける・・・。と突然二匹の犬は体をひるがえし、何事もなっかったように元のヨットの方に帰って行った。「ああ良かった」あまりの恐怖に体がへたりそうだ。「なんだ今のは?」我に返りほっと胸をなでおろす。でもまた来るかもしれないと足早にその場から立ち去りビーチに戻った。

大きく深呼吸をし気持ちを整えてリラックスする。ゆっくり歩く南国の晴れた空は陽光が眩しい。眼を細め視界を下げると遠浅の海には白波がたち、サーフィンや波と戯れる人々の歓声が聞こえる。あこがれのあのワイキキビーチか!広い砂浜の手前には椰子の木が伸び、海岸線にそって美しい背の高いホテルやリゾートマンションが立ち並ぶ。しかしどこを見てもハワイは明るく清潔で美しい。まるで絵を見ているようで湘南の海とは桁違いだ。当時アメリカと日本ではかなりの経済格差があり、まだ1ドルが360円の時代でアメリカの物価はかなり高かった。50年以上前、海外旅行がまだ珍しい頃、私は洋上大学に参加し船でアメリカに渡ったことがあった。

途中ハワイに寄港しバスツアーのあとワイキキでの自由時間に、一人景色に見とれビーチを散策していると、はずれにあるヨットハーバーの中に侵入した。日本では見たこともない美しい大型ヨットの数々に、つい見とれていて桟橋の奥の方まで入り込んだのがまずかった。事前に何の情報もなく、まさか船の中に番犬がいるなどと思ってもいなかった。でも今考えてみるとあの犬、そうとう訓練された犬でヨットから一定の距離を離れると、あっという間に普通に戻った。船が盗難にあうからか?番犬を乗せている船もあったのだ。幼児のころにいきなり犬に噛まれ、保健所で太い注射をうたれていらい、犬の思いにはろくなものがない。

そのご我が家でもビーグル犬を飼ってイヤイヤ毎朝散歩に連れて行ったが、この犬が私になつくことは無かった。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)

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