砂糖

私はコーヒーや紅茶には通常、砂糖は入れない。別にダイエットを気にしているわけでもないが、年齢と共に嗜好が変わってきた。日本人全体の好みも同様で、チョコレートやケーキなども以前ほど甘くない。たまに外国産のクッキーなどをお土産で貰うとすごく甘く感じる。それと近ごろ軒数が減ったが個人経営の喫茶店にはいり、時間つぶしにコーヒーなどを頼むと、知らぬ間にコーヒーに入れるスティック砂糖もずいぶんスリムになっている。以前はもっと太っていて、いつも半分しか使わないで切り口を折り残しておいた。自販機で買う飲料も、砂糖の入った甘いものより無糖のお茶の方が人気があるようだ。

戦後暫く私が幼児の頃、日本には外貨が無く台湾も日本から独立したので、砂糖は貴重品であった。そのため代用として合成甘味料のサッカリンが使われた事もあり、これで作られた食品はどれも甘みはあるが不味かった。甘さが何か不自然で、苦味も少し舌に残る。当時サッカリンは小さな試験管のような透明なガラス管に入っていた。白いその結晶は同じグラム数で砂糖の500倍の甘さを持つという。我が家でも母親が試しに使ってみたが、あまりに不味いのですぐにやめた。(最近合成甘味料はダイエットコーラなど飲料水にも使われているようだが、ステビヤやサッカリンはカロリーが全くないらしい)それに当時家庭で使う砂糖はだいたい茶色の三温糖で、白砂糖は高級品なのでわが家ではあまり使わなかった。

「伸ちゃん、ちょっと待ってな」と戻ろうとする私をおばさんが笑顔で呼び止める。そのころ母親に頼まれ自宅前の家に回覧板などを届けることが度々あった。おばさんは奥の台所に消え、ゴソゴソと何かを取り出しちり紙で丸めて「これでも舐めて帰りな」と手渡してくれた。開くとなんとそれは白砂糖だった!前の家も子供が多く飴等も常備してない。飴の代わりにお駄賃が砂糖のこともあった。とりあえず甘いものに飢えていた時代、それが砂糖でも嬉しかった。喜んでおばさんに礼を言い、家に戻り母親に告げると、母親もニコニコ「そうか、この手があったのか!」と言いたげだった。そのくらい砂糖は貴重で子供達は飴玉一つで泣きやんだ。

私はチョコレートが好きだ。子供の頃はめったにお目にかからなかったので、今もチョコレートを見るとつい手が出る!たまに孫が来宅するがテーブルの籠に入るチョコレートなどには見向きもしない。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

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