サッポロビール

「不器用ですから!」もう40年以上も前になるか?当時ヤクザ映画などで人気のあった高倉健さん。かれは俳優としてだけでなく私生活でも「男は寡黙の方がよろしい。」という姿勢を通した。大和男子は昔からベラベラしゃべって余計な事は言わない。そしてこの傾向は関西よりも、武家社会を継承してきた関東のほう強かった。しかし吉本のお笑い芸人達が東京に大挙進出するようになった80年代あたりから、「楽しい男の人が好き」と東京の女性の価値観も変わったような気がする。私も子供の頃「男は余りしゃべるな」と母親や姉達に饒舌を注意されたことがある。しかし当時はまだ社会全体として、男の寡黙を美化する風土が残っていて、言わずとも感じあう日本人独特のコミニュケーションの基盤もしっかりとあった。しかし今では寡黙な男の優しさなどを評価する女性も減少していると思う。

日本は島国であるため、建国以来殆んど外部からの侵略を受けないで現在にいたっている。そこで長い年月をかけて、日本固有のヒューマニリレーション(人間関係の相互理解)を構築してきた。言葉を発せずとも以心伝心お互い心を探り、コミニュケーションをとる・・・。「空気読めよ!」今の若い人達にもこれは継承されているのだが、日本人のこの常識は海外では通じない。特にお隣の大国ではなおさらだ!かれらは大きな声で会話する。それは自己を強く主張しないと他人に負ける。人間関係が相互理解の並列でなく、上下関係で成り立つ勝負の国のである。いかに相手を蹴落とし自分に服従させるかをいつも競う。

最近国会で忖度するという言葉がまた問題になった。忖度とは(人の気持ちを推し量ること)と辞書にはあるが、この言葉もまた日本人的な情念を示す上で重要な語彙である。言われなくても他人の思いを気遣い何気なく行なう行為。でもこれら日本人のコミニュケーションの取り方はデリケートだけに非常にもろい。これからわが国にも外国人が多く居住するようになると、日本人はもっと大声で我をぶつけ合うようになるのだろうか・・・?だれが主導するのかグローバルスタンダード(世界の言語、文化、価値観の平準化)というローカル文化否定と破壊の大波。声を張り上げて自己主張しないと、だれも見向きもしない社会の到来を危惧する。

「男は黙ってサッポロビール」20年後まだ生きていれば以心伝心、お互いに人を思いやる心を持って、静かにゆっくりとビールが飲める日本でいると嬉しい。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

© 2024 冨岡陶芸工房 勝田陶人舎