茶飲み話・寝転び族

そういえば最近「こいつら全く邪魔なんだよな」と気になっていた通学電車内での、床にわざわざシャガミスマホする学生を見かけなくなった。とくにドア付近にシャガまれると、乗り降りの際に通り道をふさがれイラつく。注意をしようかと思うが、面倒なので他のドアから降りたりしていた。

そして十年以前は道やホームにベッタリ座り、話や飲食などをする菜食主義者ベジタリアンをもじった「ジベタリアン」と名付けられた若者が、日本でも社会現象になったこともある。偏差値教育の弊害でいまの学生は疲れているのか?と見過ごしたが、戦後の食糧不足の時代でもあるまいし、電車到着までシャガんで待つ姿など、だらしなく恰好わるいと顔をしかめた。

「展示中のソファーに寝転ばないでください!」の張り紙を無視し、多くの若者が長椅子を全て占拠する。中国のイケアなどでは最近昼間から就活や受験戦争に負けて、夢の実現をあきらめた無気力者達が店内でごろ寝していという。でも店員はその人数があまりに多いので、注意することをやめたらしい。そのほか公園や公共の場所でも状況は同じで、行政も対策に苦慮しているという。

中国の大都市では摩天楼のような高層マンションが林立している。でもそれらの殆んどが高額の投資物件用で人はあまり住んでいない。入居者も少ないので住んでも空き巣に狙われることが多く不用心だという。その一方地下街では職にあぶれた農村出身者の多くのホームレスが寝そべり道を塞ぐ。いよいよ中国の格差社会は矛盾だらけで沸点に達してるようだ

夢を失った「寝転び族」の多くが自暴自棄になり起き上がったとき、その矛先は共産党に向かうかも。中国の経済成長も終焉を迎えすでに過去のものとなって来た。一割の富裕層と九割の貧困層の階級は固定し、最近の資産価格の上昇では絶望的に格差拡大を続ける。でも監視カメラをいたる所に設置し、不審者の取締りは磐石に見える。そしてスマホでのネットユーザー共産党批判も厳重に規制され何も出来ない。

そこで格差社会に対する新たな若者の抵抗が、無言の寝転びなのかもしれない。(世の中の急速な変化に疲れて、草上に横たわる茶碗。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

© 2024 冨岡陶芸工房 勝田陶人舎