鯨のベーコン

 

「へーえ、こんなに薄っぺらいのが、この枚数で千円もするのか!」思わずつぶやくが迷ったあげく、それを手に持つ籠に放り込む。今夜はこれをツマミに冷酒でも飲むか?鯨のベーコンは最近スーパーでもあまり見かけない。それにしても凄く高い、千円で紙のように薄く小さなベーコンが4,5切れだ。「今では全く高級品になってしまったよなあ」我々が子供の頃、鯨のベーコンは安価で乾物屋で30円も払うと、一人では食べ切れない量たった。黄色く半透明で脂分のあるベーコンはベッコウ色で、真っ赤な食紅で色付けされた淵との色のバランスも良く、美しくさえもあったのだが。姉達や両親も気持ち悪いと食べないので、私はわざわざお金を貰い自分で買いに行っていた。

「なんでそんな物、旨いの?あんたの味覚どうかしてるよ」家に帰り包みを開けると姉達に言われたが、横から取られることもないのでゆっくりと食べた・・・。捕鯨が禁止されて久しい。鯨の取りすぎで個体数が減り絶滅が心配された鯨も、シロナガスクジラ以外は近年、むしろ増えすぎて困る状況でもある。適当に間引かないと子魚を食いつくし漁業にも影響が出るはずだ。しかし捕鯨の解禁とはならず、逆に調査捕鯨すら禁止される状況になっている。鯨はウオッチイングなど、優雅に泳いでいる姿を船で見る観光資源で、食料ではない!との認識も強まり食卓から完全に消えてしまう日も近いのか。

アメリカでも以前は食料としてでなくランプの油に使用するためだけに、太平洋で多くの鯨を殺していた。しかし石油に取って代わると、近年では全面捕鯨禁止を主張する。「鯨を殺して食べるのは残酷で、野蛮だ!」オーストラリアなど鯨を食べる食文化の無い国や、海の無い多くの国々は叫ぶが、「だったら牛や豚は可愛そうじゃないのか?」ということになる。「牛や豚は食べてよいとちゃんと聖書に書いてある、でも鯨は書いてないのでだめだ」まことに勝手な理屈である。それでは仏教の経典には「牛や豚など四足は食べちゃだめだと書いてあるが、鯨は足がなく魚なので食べてもいいと書いてある」と主張してみたらどうか。日本の食をしっかりと支えてきた鯨食の文化、なくならないで欲しい。

最近日本は国際捕鯨委員会からの離脱も検討しているようである。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)

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