最近、乾物屋という名の店がほとんど無くなった。しかし市川駅近くの千葉街道沿いには「湯浅」という名の乾物屋が今も健在で残っている。ところがこの店一軒の店でありながら真ん中に仕切りがあり、実際には二つの店に分割されている。相続で二等分した結果このような形態になったらしい。乾物屋の多くがその後スーパーマーケットやコンビニに変わってしまったが、我々の子供時代には乾物屋がまだあちこちにあった。乾物とはまさしく乾燥させた食材を売る店で、冷凍設備の無い時代、食品の多くは腐敗を防ぐため天日で干したり乾燥させて保存した。たとえば切り干し大根、干しワカメ、干し昆布、凍り豆腐、干し芋、スルメ、椎茸、鰺や秋刀魚の干物、鰯の丸干し等々本当にたくさんある。このような干物を専門に商う店を乾物屋と呼んでいた。
私は乾物が好きだ!特に魚類は太陽にさらし乾燥させると生臭みが消え、イノシンサンも増し旨みが成分が増幅する。特にサンマやアジは開きが旨い!しかし最近スーパーなどで買うヒラキの干物は天日で干さず、ただ乾燥させただけの干物も多い。でもなんとなく香りと味が違う。たまに房総や伊豆のお土産でもらうアジの干物は、むかし食べた干物の香りがする物もある。やはり干物は浜の潮風にさらした天日干しに限るようだ。油の載った干物はグリルの上火でじっくり焼くとうまい。まだグリルの無い時代、七輪の上に網を載せて焼くと落ちた油で魚が黒焦げになり、よく見ていないと大変なことになった。
これも直ぐ上の姉に子供のころ聞いた話だが。姉が市川市の第三中学校に通ってた時の昼食時、いつもユニークな弁当を持ってくる隣の鈴木君を横目で見ると、「あれ、まあ、今日の弁当はまたまた凄い」何だと思いますか?なんとそれは四角い弁当箱のご飯の上に、アジのヒラキが一匹丸ごとベッチャリと乗っている、只それだけだったとか。鈴木君はそのアジを箸で取り出し、横腹からガブリと噛り付く、「ワイルドだどー!」姉は心の中で笑い転げたという。「へー、アジ一匹丸ごとですか。鰻重でなくアジ重も世の中にはあるんですね」よい勉強になりました。当時は子供も多く弁当などに気遣う親もまだあまりいなかった。
写真、片口風のお皿に切干大根の煮物をのせてみたらどうだろう。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)